雑炊閣下備忘録

ブログというものを始めてみることにした。どうなるか分からないが、いろいろやってみようと思う。

ゼノブレイド3 感想

こ(以下略)

 

 『ゼノブレイド3』(以下、「本作」)をクリアしたので感想を書いていこうと思う。

 ネタバレ全開で書いているので未クリアの人はご注意を。

 

全体の感想

 一言で表現するなら良ゲー以上、神ゲー未満という所。少なくとも買って遊んだことを後悔するような出来では決してない。

 これは恐らく方々のレビューで指摘されていることだと思うが、評価を落としている主な要素はシナリオであり、それ以外は概ね完成された作品であった。

 こんな辺境のブログにやってくる人が購入の参考にする情報を求めているとはあまり思えないが、買うかどうか迷っている人はここまで読んだらもう十分なので、パッケージを買うかe-shopで購入しよう。

 では、各要素の感想に入るが、最も言いたいことが多くなってしまうシナリオについては最後に回すことにする。

 文章の構成上、こうするとどうしても辛口の印象がつきやすいが、筆者個人としてはこのゲームを極めて高く評価しているということは、ここで述べておく。

 

マップと探索要素

 WiiUで圧巻のオープンワールドを創造し(『ゼノブレイドクロス』)、『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』に参加するなど、マップの作成能力には定評のあるモノリスソフトだが、今作においてもその実力は遺憾なく発揮されている。

 今作のマップは前作や前々作の「巨大な生物の上に世界がある」というインド神話的にぶっ飛んだ設定と比較すると割と普通の大陸なので、あれほど特異な地形が沢山あるわけではない。

 しかしながら、分割された各エリアがかなりの広さを誇り、そこかしこにイベントやアイテムが散りばめられているので、視覚的にもゲーム的にもプレイヤーを退屈させることがない。

 筆者が感心したのはガイド機能で、これは前々作のリマスターにあたる『ゼノブレイドDE』の時点であったものがさらに進化を遂げて搭載されている。

 このガイド機能はかなり優秀で、これに従ってさえいれば決して迷うことはないので、寄り道を推奨する本作のデザインとかみ合わないのではと製作者は悩んでいたようだ。

ただ、ガイドの仕組みは本当にガイド通りにしか進まなくなって、
脇道にもっと面白いあそびがあるのに、
そういうところを見てもらえないのではないか
という懸念が、個人的にあったんですけど・・・。

モノリスソフト取締役 高橋 哲哉)

(下記リンクを参照)

www.nintendo.co.jp

 しかし、遊んでみれば分かるが、これは杞憂であった。

 矛盾しているようだが、目標への最短経路を示してくれるナビゲーション機能が、かえって寄り道しやすくしてくれている

 「どこを通れば先に進めるか」が明確であれば「敢えてそこから逸れる」という選択を取りやすくなる(たとえばナビゲーションが正面を指しているなら、左や右に向かえば寄り道できると分かる)し、仮に寄り道をして良く分からない場所に出てしまったとしても、その気になればすぐに本筋に戻れる安心感があるのだ。

 このナビゲーション機能と、大幅に緩和された落下ダメージ、水中で戦闘が可能になっていること(!)など、一作目、クロス、二作目とシリーズを重ねて培ってきた経験が最大限に活かされ、極めて快適な探索体験を実現している。

 本作を遊んだ者ならばほとんど誰でも「寄り道しすぎて本筋が進まない」という経験をしているはずだが、この秘密は秀逸な設計によるところが大きいだろう。

 付け加えておくと、本作には前作や前々作からの繋がりを強く感じさせる風景や事物が多くみられ、シリーズ経験者なら好奇心を強く刺激されること請け合いである。

 探索のキモであるサブクエストについても、今作では一つ一つのストーリーが丁寧に作りこまれており、無味乾燥に「○○を3体倒してこい」みたいなものはなくなっている。これは本当に素晴らしかった

戦闘

 オートアタックを採用し、複雑で奥深い戦闘で知られてるゼノブレイドシリーズだが、本作でその戦闘は完成形になったといってよい。

 『ゼノブレイド2』で複雑化を極め、脳汁が出る戦闘を極めたシリーズではあったが、奥深く面白い一方で、(ゲーム中にチュートリアルを読み返す機能が実装されていないこともあって)ユーザーにとっては過酷な学習曲線を描いていた。

 本作の戦闘は、無駄を徹底的に削ぎ落とすことで、分かりやすさと奥深さを両立している。これだけでも難しいのに、パーティ最大7人での同時戦闘などという無茶をやっているのだからもう恐れ入るというしかない。

 ユーザーからのアクセスという意味でもかなり気を遣われており、チュートリアルがいつでも読み返せるのは当然として、RPGとして異例なことにレーニング機能まで搭載している。

 戦闘が苦手な人のためにかなり優秀なオートバトル、難易度選択も完備で、このあたりは本当に文句のつけようがない。

 細かい欠点を敢えて挙げるならば、やはり多くの敵味方が入り乱れる関係上、自キャラとターゲットの関係が分かりにくい(どの敵をターゲットしているのか、そもそも自キャラはどっちを向いているのか等)こと、右スティックの押し込みによるステップが操作としてやや使いにくいこと、前作であったようなハイテンションなナレーションがなく(これは本作の雰囲気もあるので好みの範疇でもあるが)経験者としては一抹の寂しさを覚えることであろうか。

 特に自キャラとターゲットの位置関係は、ターゲットの向いている方向と一部スキルの特効が関連し、さらにそれがアタッカーのDPS(秒間ダメージ)に直結する本作ではかなり痛いところで、オートで敵に近づく機能や、方向判定の多少の緩和(特に体の大きなボス)が欲しかった所である(アップデートで来ないかな)。

音楽

 質は間違いなく高い。

 しかし、これはシナリオの項目でも書くつもりのことだが、本作は全体的に雰囲気が暗く、またキーアイテムとして篠笛が登場する関係上、その侘しさを感じる音色が頻繁に現れるので、派手な曲やノリノリの曲が流れにくい

ja.wikipedia.org

 ゲーム・ミュージック音ゲーなどの一部ジャンルを除けば、重要ではあるが脇役でもあるため、ゲーム音楽の使い方として間違っているわけではない。

 間違っているわけではないのだが、だいたいの方向性が統一されると、その分、各曲の多様性が分かりにくくなってしまう弊害がある。

 前作、前々作と比べると、本作の音楽は印象に残りにくい人が多いのではないかと思うが、それは音楽そのものの品質が悪いのではなく、音楽が飽くまで脇役に徹しているからなのだ。

 たとえば、とある場面で流れる前作の名曲のアレンジは、気づいた人であれば確実に記憶に残っているであろうし、幾度となく流れるメビウス戦のイントロも覚えていることと思う。

 あのように、音楽そのものも主役級として前面に出る場面であれば、本作もしっかりと記憶に残るようにできているのだ。

グラフィック

 前作から大幅に進化している。キャラクターモデルは実に作りこまれており、動きも遥かに自然になった。

 露出度が高くもないのにあまりにもハレンチすぎるフルメタジャガーのユーニなど、製作者の性癖と飽くなき拘りを強く感じさせられるモデリングも沢山あって大変によろしい。……余は満足しておる。

 話を戻すが、フィールドの空気感、モンスターの造形、ムービー中の表現なども高水準にまとまっている。

 唯一の欠点はムービー自体が長めかつ頻度が高いこと。

 寄り道が多いゲームなので全体のプレイ時間からするとムービーの時間など微々たるものだが、メインクエストやヒーロークエストに集中しているためある程度連続して見ることが多く、クオリティは悪くないものの「あーまた操作できない時間か」とは正直思ってしまった。これは次回作からは少し改善してもらいたいところである。

シナリオ

 これを最後に持ってきたのは、これが本作においてほとんど唯一、賛否でいえばやや否寄りの評価を筆者が下している要素であることと、単純に長くなりそうなことが理由である。

 繰り返すようだが、筆者は本作を高く評価している。ここに書かれていることが、上記の美点を打ち消して余りあるような欠点だとは考えていない

 世界設定

 本作は上記の「マップ」の項目で述べたように、主人公たちがよってたつ大地そのものにはそれほど突飛な設定は採用されていない。

 その代わりに、その世界の上で展開されている社会構造、自然の摂理、人々の関わりなどがいずれも飛ばし気味だ。

 そして色々ある中でも、特に「10歳の状態で作成される少年兵たちが、最大10年の寿命の間、命を削り合う」という、どう見ても地獄としか思えない設定が際立っている。

 最初にPVでこの設定を知った筆者は、その瞬間から「話を作りにくそうだな」と感じていた。というのも、当たり前だが、この設定であれば基本的に「10~20歳の若者」しか登場しえないし、あまりにも現実世界の(日本の)状況から乖離しすぎていて、プレイヤーが登場人物の心境を想像するのが難しいからである。

 上で筆者は地獄と書いたが、現代日本人の感覚からすると何がどうあれ、この状況は是正すべき大問題としか思えないので、それを前提にシナリオを構築する必要が生じてくるのだが……。

 基本的に話が暗いのは好みの問題だが、これは『エルデンリング』などでも目立ったことだが、過度に雰囲気を一定の方向に寄せると、BGMや風景、各種施設など他のところにしわ寄せが行きやすい

 本作の場合は、BGMにややその弊害が出ていると思う。

 あとは、特に終盤の展開について分かりにくい部分が目立っている。

 たとえばオリジンとはどういうものなのか、等、比較的大事な情報がムービーでさらっと流れてしまうので、一度誤解してしまえばそれっきりになってしまうのである。

 ここは用語集的なTipsで読み返したかったところだ。

キャラクター

 本作の登場人物、特に悪役は、構造上、この前提と真っ向から反することを余儀なくされており、分かりやすく言うと「とんでもない逆張り野郎」にならざるをえない宿命にある。

 設定からの当然の帰結として、主人公たちは過酷な摂理を変革すべく冒険をすることになるわけだが、悪役、たとえばこの寿命システムを運営し、そこから利益を得ているメビウスたちは、「このシステムが存続しなければならない理由」を私見として述べることを要求されるのであり、度し難いゲスになるか、さもなくば何かよう分からんことを長々述べる頭おかしいやつになるかの二択が迫られている。

 ゲスの方は良い感じに外道になっていてなかなかいい感じの出来なのだが、よりによってシナリオの要所に登場する「悟ってそうなキャラ」とかが、後者の「頭おかしいやつ」になってしまっている。

 たとえば見飽きるほど圧死シーンを繰り返し映されるヨランは、「いつも仲間の足を引っ張ってしまう劣等感の塊」「得意なことはあるが悲しいほどこの世界のニーズと合っていない」「優しくて気弱な子供」と設定的にはきちんと整っているのだが、寿命十年で殺し合う世界を何とかしようという時に「弱者は選べない、僕は空を飛ぶ鳥じゃなくて地を這うミミズ」とか言われてもこっちは困るのである。

 だからそれを今から何とかしようとしとるんじゃ黙って見とけヴォケ!

 ……。

 いや、彼の問答それ自体は悩みとしてわかる。

 とても人間的で共感できる部分もある。

 だが、今じゃないだろそれは。

 今する話かそれは?

 「戦闘技能」という限られた技術のみが評価されるうえに、どっちみち10年で死ぬクソみたいな世界が広がってるんだぞ。

 どう変わってもたぶん今よりマシだろ。

 「強い君たちはいい。でも弱者はどうすればいい?」?

 いや今は死ぬしかないけど変わったらもうちょいマシなんじゃないですかね、普通に。

 この辺の悪役の問題提起(特に終盤に多い)が筆者から見てズレまくっているので、いまいち心に響かないのだ。

 初期状態が全く議論の余地がないほど変革の必要性が常識的に明らか過ぎて、まずそこで勝負すんなよ……という気持ちが強い。

 たとえばそういう過酷な状態にしないと世界の維持がかなり厳しいとか、もうちょっと何かこうあったと思うのだが、結局過酷な理由がメビウスの趣味なので本当に議論の余地がなさすぎる。なぜこんなことになってしまったんだ……。

 このあたりの話で割を食っているのはメビウスだけではなく、たとえば後半のヒーローとしては登場機会の多いゴンドウ

 たぶん遊んだ人ならかなり印象に残っていると思うが、いや、どんな事情があるにせよ、いくらなんでも余命1カ月のやつの寿命を揶揄すんのは人としてライン超えでしょ。病室で余命幾ばくもない患者に同じことできるか? 無理だろ普通。

 このセリフには大した意図がなかったことが後ほど発覚するうえ、以降のゴンドウが別人かってくらい普通にいいやつなので(多少口はキツいけど)、特に初対面のあのシーンがかなり浮いて見える。

 なんていうかこう、こういう小難しい議論をやりたいならこの辺の設定はもっとマイルドにしとかないといけなかったと思う。

 明日の食事にも事欠く状態で哲学の議論をやってるようなおかしさがあるのだ。

 閑話休題

 キャラクターについては、もちろん良い部分も沢山ある。

 主人公パーティは、それぞれに個性的かつ魅力があってプレイヤーを惹きつけてくれるし、仲間となるヒーローたちも、デザインと性格描写の両面でそれぞれに好感が持てる。NPCたちとの関係を表現したキズナグラムも合わさって、とても楽しい。

 変化に富むサブクエストと合わせると、本作のキャラクター造形は(悪役以外)よくできていると言えよう。

結末について

 本作の結末は、何ともスッキリしないものとなっている。

 最後にノアは、ミオと再会できたのか? そういう部分はまだいいのだが。

 そもそも、「二つの世界があって、それが近づいて、(結果的に)すれ違って終わる」という流れそのものがこのモヤモヤの主たる原因であろう。

 ある程度ストーリーを楽しむ我々現代人は、その常として止揚型のシナリオに慣れ親しんでいる。たとえばα世界線とβ世界線があるとするなら、トゥルーエンドは絶対にその狭間のどこかにあるはずだし、ロウとカオスが永遠に争う世界のマルチエンドを見た時に、結局トゥルーはニュートラルなのではと考えてしまうという、そういう習性がある。

 ただ二つの真ん中を取ればいいというのではない。

 重要なのは、変化の前と後を比べて、後の方が何らかの点で進んでいるというところだ。

 漫画家の荒木飛呂彦などはこの点を明言しているが(もっとも荒木の言うものは、もっとミクロな話の展開をも含んでいる)、結局のところ何も、あるいは大して変わっていない結末というのは、読者やプレイヤーからして徒労感が強い

 ノアたちの世界とミオたちの世界が、ぶつかる直前の状態で再生されてそのまま進んでいくのなら、俺たちは何のために戦ったんだ? と。

 世界の見た、マジで泡沫の夢じゃねえか……。

 そもそも結局大して変わってもいないのに、あのZとかいうやつは何をあんなに恐れていたのかと。

 こっちは新たに生まれる統合世界のルールを決めてしまうのではくらいの緊張感をもってラスボスに挑んでいたのだけれども……。

 この部分はいまだに本当に納得がいかなくて、何も変わらねーのになんであいつら強者がどうとか弱者がどうとか言ってたんだろうみたいな気持ちがぬぐえない。

 マジで意味なかったのでは……あの議論。

 いやまあ、アイオニオンの地獄みたいな環境から抜け出せたのは良かったと思うんだけれど、ただ俺と旅をしていたノアたちと、最後に出てきたショタたちは俺の中では別人なんだよな……ノアとNくらいには。

 このあたりは本当にDLCで何とかして欲しい。

 頼むから前日譚より後日譚を作ってくれ……頼む……。

終わりに

 深夜に筆を執ったからか、思った以上に感情が爆発してしまっているが、シナリオについてもこのくらいにしておこう。

 いや、長期間凍結していたこのブログを再開させたんだから、実際凄いよこのゲーム。みんなもやろうぜ、ゼノブレイド3を!